昨日、アウトレットモールに行った時の話。
フォード社の工場を改造して出来たそのモールは、ベイエリアで唯一の屋内アウトレット・モールで。
サンフランシスコ・ベイエリアといえば、もっと南にあるギルロイのアウトレットが超有名で、ここはある意味僻地なのに、シリコンバレー周辺ツアーかなんかのスケジュールに組込まれてるのか、夏休みや連休続きの頃などには結構な数の日本人を見かけるんですよ。
で、昨日。
来週、日本は祝日が2つもあるからか、案の定、昨日も買い物に勤しむ日本人グループが多数。
ある店の入り口付近でチラチラ服を見ていた私の耳に、べたべたな日本語英語(っていうより、英単語交じりの日本語って言った方が正確かと……)が聞こえてきた時点で、既にどうゆう状況下は予想に容易いことではあったんだけれども。
客 :「えと、Whiteでぇ、この辺にPocket(パントマイムしてる)、えと、Two……小さいってなんだっけ……ミニモニだから、mini? あ、プチ? 違う? あ、small!?」
(あたたた……)
店員:「Ah…are you talking about Jackets, Pants, or something else?」
(おぃおぃ、そんなことも伝えてないのかぃ!)
客:「え? じゃけ? じゃけって何? ぺん? No, no stationery!」
(おぉ?! ステーショナリーなんて単語は知ってんのか?!)
店員:「…Stationery…?(呟きに近い声で)」
(そりゃ、困惑するよなぁ。服屋に勤めてるのに、いきなり「文房具じゃなくて」なんて言われたら。なんのこっちゃ?!って感じだろうな……)
その、訳分かんないことを喋ってるのは、女の子(A)。
その子以外に女の子が2人(BとC)に男の子が2人(DとE)の5人グループで、BとCはAにくっついて、それなりに励まして(?)るんだけど、DとEはすっかり退屈して『俺達、別の店、見てきてもいいか〜?』とでも言いたそうな様子。
とうとうAが、通じない(当たり前)ことにイライラする余り、半べそで癇癪を起こし出したもんだから、DとEの表情は完璧にウンザリってものに。
BとCはというと、Aにつられて半べそになりながら、ブツクサ言い出した。
「もぉ、アライさん、何処行っちゃったのよぉ〜?」
「アライさんが居れば、Aちゃんがこんな苦労しなくて済んだのにさぁ!」
「だよねぇ〜。真面目に仕事しろっての!」
彼女達の台詞から察するに、アライさんって人は、多分、ツアコンなんだろうな。
ただ、アライさんにとっての客が彼らだけだったら彼らを置いてどっかに行っちゃうことは有り得ない訳で、多分、他の客の面倒を見に行ってる……んでしょうねぇ……。
大学時代、現地添乗員(旅先のみ担当するツアコン。日本〜現地間のツアコンは別にいる)のバイトをやったことある私としては、アライさんの苦労が手に取るように分かってしまい、思わず心の中で合掌。なぁ〜むぅ〜。
……と、祈ってたのが悪かった。
こちらもまた、困惑顔にちょっとウンザリを足したような表情してる店員と、バッチリ目が合っちゃったじゃないですか!
『ぅわっ、マズッ!』と思った瞬間。
「Miss! Yeah, you! Are you Japanese? Japanese, aren’t you? Can you help them?」
(そこの貴女。そう、貴女。日本人? 日本人だよね? 彼女達を助けてあげてくれないかな?)
いや、気持ちは『help them』じゃなくて、『help me!』なんでないの、君ぃ?……なんて暢気に構えてないで、さっさと逃げろよ、自分っ!
さすがに、ジャパニーズという単語は聞き取れたのか、店員の視線を追って、5人が一斉にこっちを見て。その途端。
「あ、あのっ、日本人ですかっ? 英語、喋れます??」
「この店員さん、全然分かってくれなくてぇ。困ってたんですよぉ」
「よかったじゃん、Aちゃん! 通訳してくれる人、見つかって!」
……いや、あの。私、まだ英語喋れるとも通訳したげるとも言ってないんですけど……。
でも、ウルウルお目々の女の子3人と、必死なお目々の男の子2人+店員さんに見つめられちゃ、ノーとは……言えないやね、やっぱり。
ここで、いきなり結果というかオチというかを話してしまうと。
Aちゃんが探していたモノは、そのブランドでも日本仕様のモノだったんですね……多分。少なくとも、アメリカでは売ってないモノだったの。
まぁ、そんなことじゃないかとは思ってたんだけれども。
化粧品などが最たるものなんだけど、日本は規定が無茶苦茶厳しいらしく、日本の示す規定に合わせた『日本仕様』の商品というモノが結構ありまして。一見同じ商品なのに、なんで日本で購入すると馬鹿高いの?!ってモノのほとんどが、それ。
手間がかかってる分、高くなるのは当たり前だよね。まぁ、税金の問題も無いとは言えないけど。
化粧品と違って、洋服に関してはアメリカのメーカーに限るのかもしれないし、日本仕様というより日本限定デザインってことになるんだけど。
日本人の美的感覚って、アメリカ人のとは違うんだよね。
だから、アメリカで流行したモノをそのまま真似てる、もしくは、直輸入されてると思ってるかもしれないけど、そうじゃなくて、基本デザインを利用して日本仕様に修正されてる、とでも言えばいいかな? そんなのが、結構ある訳なんですよ。
中には、アメリカでは見たこともないデザインもあったりしてね。「これ、アメリカで流行ってるんでしょ?」って見せられて、へっ?って思うモノって少なくない。
『あ〜、そういえば、こうゆうデザインのモノ、今流行ってるんだっけ。でも、こっちのが断然可愛い(カッコいい、洗練されたデザイン……etc)だなぁ』なんて、アメリカのブランド物を日本で買って帰ってくるなんてこともあるくらい。
んでもって、それを見た日系アメリカ人や、目利きのアメリカ人の友達に羨ましがられたりなんかして(爆笑)
そうゆう訳で。
「これはアメリカのブランドだから、この製品を買ってこよう」と考えるのはいいけれど、その製品が必ず見つかると思ったり、はたまた、友達に買ってきてあげると宣言して来るのはいただけない、というより、やめた方がいいと思うよ。
それに、日本での商品名と海外での商品名が違う場合も多いので、出来れば切り抜きかなんかを持ってくることをお勧めします。そうじゃないと、Aちゃんのようになる可能性大ですわよ。
あと、アウトレットは、あくまでアウトレット。
普通のお店より安い分、置いてないモノも沢山ある訳だから、どうしてもこれ!というモノがある場合は、普通の店舗に行きましょ〜。
話は戻って。
商品の名前は言えるけど、雑誌に載ってたのを見ただけだったというAちゃんは、お友達が欲しがってるのを聞いて、お土産に買って来てあげると宣言して来たそうな。
日本語の説明でもイマイチ想像し切れなかった私が、「切り抜きでもいいから、写真とかないの?」と聞いたら。
「え〜、持ってないですぅ。名前言えばいいと思ってたし。ねぇ、Cちゃん、あの雑誌、持って来てないの?」
「雑誌なんて持って買い物に来る訳ないじゃん!」
「Aちゃんの買い物じゃん。付き合ってあげてる私達のせいにしないでよ!」
「そんな言い方しなくてもいいでしょ!」
……喧嘩しないでください、こんなとこで。
店員との会話で、これは多分日本版の製品だろうなと判断して説明したところ、「どうしよう。約束したのにぃ……」とAちゃんが、また半べそ。
「無いもんは無いんだし……」と言ったところで収まりそうもないので、「お店の中を見て廻って、似てるものを探して買っていってあげたら?」と、投げやりアドバイス発進。
そうしたら。
「あ、そうだよ、そうしなよ、Aちゃん!」
「お姉さん、あったまいぃ〜!」
……それくらい、気づけよ。ってか、普通の、当たり前の考えじゃないですか、これ?
お姉さん、頭良いというより、頭痛いです……。
店内を見ようと動き出したので、「それじゃ!」と店を出ようとしたら、「え……。あ、お姉さん、もう行っちゃうんですか?」ときたもんだ!
さすがに店員さんは「協力してくれて、ありがとう」と言っただけだったけど、その目もまた、不安を訴えてたりして。
とんでもないっ!
私ゃ、貴方達の通訳でもツアコンでも、好んでここでボランティアしてる訳でもないんだぞぉ〜!
私も君達と同じ、買い物しに来た、一介の客なんだってばっ!!!
……という叫びは、何とか心の中だけに収めて。
にっこりアルカイックスマイル浮かべつつ、歩みは妙じゃない程度に早足で、そのお店を後にしたのでした。
あ〜、なんで私、あのモールに行くと通訳させられることが多いんだろう?
そう。初めての出来事じゃないんですね、これがまた。
娘と同じくらいの体型だからって、出張者のおじちゃんに試着まで付き合わされたこともあるぞ。あっはっはっ!(人が良いのを通り越してないか、それ?!?!)